堀部 忠男の弁護士ノート

2015.10.07更新

 こんにちは。弁護士の堀部忠男です。

 

 民法や刑法等戦前から引き続き使用されている法律の多くは、戦後も長い間文語体カタカナ書きのものを使っていましたが、刑法は20年近く前に、民法は10年くらい前に、法律の内容はほぼ同一のまま表記だけが口語体のひらがな書きに変更されました。現在では文語体カタカナ書きの法律は少なくなってきましたが、よく利用される法律の中では手形法がまだ文語体のカタカナ書きのままです。手形法は法学部/法科大学院では商法の一科目として必修とされている場合が多いと思いますし、現在では電子記録債権(でんさい)が登場して年々流通量は減少しつつあるようですが、手形は今でも広く利用されています。そのような比較的主要な法律であるにもかかわらず、文語体カタカナ書きのままであるのは、手形法は手形の国際統一のためのジュネーブ手形法統一条約に基づき制定されたものであるので、内容を変更することはほとんどなく改正を考える機会がなかったからではないかと思います。ちなみに、条約の加盟国の手形法はほぼ同じになっているはずです。

 

 手形は簡易な手形訴訟も利用できますので、通常の債権よりは回収しやすい面はあります。しかし、一般に裏書人がいる場合は少ないので、回収できるかどうかは結局は振出人の資力次第になります。そのため、不渡りになった場合は直ちに弁護士と相談して回収のための行動を始める必要があります。

 

投稿者: 弁護士堀部忠男

2015.10.06更新

 みなさん、こんにちは。弁護士の堀部忠男です。

 

 宅地建物取引士は、不動産業者の顧客に対し宅地建物の重要事項を説明する等の仕事をします。この資格は一般には「宅建」と呼ばれています。この資格の試験はかなり人気のある国家資格の試験で、毎年10月の第三日曜日の午後に試験が実施されます。今年の試験日は10月18日です。この春宅地建物取引業法の改正法が施行され、これまで宅地建物取引主任者という名称の資格が宅地建物取引士という名称になりました。今年の試験が、名称が変更された後の初めての試験です。名称が変わって、合格率が変わるかどうか注目されています。

 宅地建物取引業者は、宅地建物取引業の事業主体として宅地建物取引業の免許を受けるほか、事務所に宅地建物取引士を置かなければなりません。そのため、不動産業に携わろうとする場合、まず宅地建物取引士の資格を取得しようとすることが多くなっています。

 宅建試験を受験される皆様の合格をお祈りいたします。

投稿者: 弁護士堀部忠男

2015.10.05更新

  こんにちは。弁護士の堀部忠男です。

  前回からの続きで民法改正の話です。

 

  法律がその効力を持つには、国会で制定された後に、まずその内容を国民に知らせる(公布する)必要があります。法律の公布は、官報という国の広報紙に掲載することで行います。公布してすぐに施行する法律もないわけではありませんが、国民が知るための期間(周知期間)をおいてから効力を生じさせる場合が多いと思われます。今回の民法改正の場合は「原則として、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」ことになっています。

  公布の話をしましたが、そもそも成立がだいぶ先になりそうです。今年の通常国会では民法改正法案は全く審議されておらず、同じ法務委員会で審議する刑事訴訟法改正案は衆議院では可決されたものの参議院で審議に入ることができず積み残されました。今年の秋の臨時国会は開催を見送る可能性もあると報道されています。開催されても他に優先する議案が多いようなので、今年中の成立はかなり難しいのかもしれません。そうすると来年の通常国会での成立ということになるかもしれませんが、周知期間は三年を超えない範囲とされていますので、周知期間を削れば当初想定した時期に施行することは可能ではあります。ただ、どうなるのかは現時点では分かりません。

投稿者: 弁護士堀部忠男

2015.10.02更新

こんにちは。弁護士の堀部忠男です。

今回の話題もまた民法改正法案です。

 

これまで民法改正法案の話題を続けてきましたが、それは内閣が今年(平成27年)3月に国会に提出した法案に関するものでした。現在、国会にはもう一つ民法改正法案が提出されています。民主、維新、社民、生活の4党が共同で8月に国会に提出したものです。これも債権法の改正に関するものですが、特に保証制度について限定した内容で、中小企業の事業資金の借入債務を代表者以外の個人が保証することができなくするという趣旨での改正を求めています。与党案ではこの種の保証を一定の条件のもとで認めていますので、国会での審議では保証の点が議論になるようです。これまでも保証が原因で経済的に苦境に立つ事例が少なくなく、民法の中でも保証制度については絶えず議論があり、過去にも改正がなされている部分です。現在、保証については、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会が制定し中小企業庁も利用を勧めている「経営者保証に関するガイドライン」があります。

投稿者: 弁護士堀部忠男

2015.10.01更新

  こんにちは。弁護士の堀部忠男です。

  内容は、前回、前々回の続きです。

 

  民法を改正しようとする目的は2つあり、①”社会・経済の変化への対応を図ること”と、②”国民一般に分かり易いものにすること”です。

  主な改正点をこれらの目的に分類しながら述べてみます。

  ”社会・経済の変化への対応を図る”目的からの主な改正点は、①保証、②債権の譲渡、③消滅時効、④法定利率などです。

  ”国民一般に分かり易いものにする”目的からの主な改正点は、①動機の錯誤(勘違い)、②履行不能(物が壊れて引き渡せなくなった場合など)、③損害賠償義務の免責要件、④賃貸者の敷金・原状回復義務などです。

  それ以外の理論的な整理に基づく改正点としては、①契約の解除、②危険負担(履行不能のうち、災害等により物が壊れた場合)、③詐害行為取消権と債権者代位権(債権の回収に役立つ債権者の権利)、④瑕疵担保責任(欠陥がある場合)などです。

  どのあたりの条文を改正するかという観点から言えば、上記の改正点の多くは第三編債権の中の総則の部分ですが、契約の部分の改正もありますし、消滅時効や動機の錯誤は第一編の総則の改正です。

投稿者: 弁護士堀部忠男

2015.09.30更新

話の内容は、前回の続きです。

 

民法の条文は、多くの場面に共通して使う一般的・抽象的な規定をまとめて前に置き、後ろに個別の具体的な規定を置く、パンデクテン方式と呼ばれる形式で配置されています。民法典の最初にある第一編は総則で、第二編が物権、第三編が債権で、第四編は親族、第五編が相続となっています。第三編の債権の中にも、第一章に総則があり、第二章が契約で、他に第五章まであります。第二章の契約の中には、さらに第一節に総則があり、第二節以降に売買、賃貸借などの契約の規定が第十四節まであります。第二節から第十四節までに規定されている各契約は、典型契約と呼ばれます。有名契約と呼ばれることもあります。主要な契約である売買と賃貸借の節では更に、それぞれ第一款に総則を置いています。法学部や法科大学院での授業は、主として民法の総則に関する講義を民法総論、第三編債権の中の総則に関する講義を債権総論、債権の中の第二章から第五章に関する講義を債権各論として開講されている場合が多いと思います。

 

今回の民法改正(債権法改正)では、第三編の条文の改正が主ですが、第一編の総則の条文の中にも改正されるものがあります。パンデクテン方式は、条文作成の場面では効率が良いですし、体系的にもすっきりしている点はよいのですが、実際の事案に条文を当てはめようとしたときに、使用する条文があちらこちらに散らばる場合が多くなってしまい慣れないとかなり分かりにくいというのが難点です。

投稿者: 弁護士堀部忠男

2015.09.29更新

弁護士堀部忠男が法律問題や判例についてお伝えします。

 

  民法改正法案が先日閉会した通常国会に提出されていましたが、成立には至りませんでした。

  民法改正法案は、長年にわたる法制審議会の審議を経て今年3月に国会に提出されました。19世紀に民法が制定されて以来の抜本的な改正と言われていますが、そもそも民法とは何を定めた法律なのでしょうか。

 

  民法は、私人間の関係を規定した法律です。例えば、売主と買主、貸主や借主、物の所有者や担保権者、親と子というそれぞれの立場の人がどういう権利を持っていたり、どういう義務を負っているかということを定めています。そして、民法は大きく分けて2つの部分に分かれます。

  まず、民法には、相続や結婚等に関して規定した部分があります。その部分は身分法とか家族法と呼ばれています。夫婦別姓にするかどうかというのはそちらに関する部分です。一般の方にはこちらの方がなじみがあるかもしれません。今回の改正はその部分ではなく、もう一方の財産関係に関して定めた部分です。その部分は財産法と呼ばれています。会社で契約などを扱っている方は、この部分についてよくご存知ではないかと思います。その財産法が、さらに2つの部分に分かれます。その一つが物権に関する部分で、もう一方が債権に関する部分です。物権というのは、その物が誰のものかという所有権というのが主なもので、他に住宅ローンを借りたときなどに銀行が不動産を担保にとりますが、そのときの抵当権というものなどの担保物権というものがあります。債権に関する部分は、一般的なのは契約を締結した場合に、契約と締結した人が他の当事者に対してどういう権利を持っていて、またはどういう義務を負っているかを負っているかということを規定します。

  今回の改正は、そのうちの債権に関する部分に関するもので、そのため債権法の改正と呼ばれる場合もあります。

投稿者: 弁護士堀部忠男

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